PROJECTS

広域評価に向けた作物生育情報収集技術の開発

近年の気候変動下における作物栽培の効率化のための方策として,リモートセンシングを利用した植物状態に関する情報の可視化が注目されています.これまでに作物の生育動態に関する定量的評価手法の開発を行ってきましたが,この評価手法では広域的な評価が困難でした.ここでは,広域評価への応用を前提に,群落外からの分光反射計測に加えて,植物状態を評価するための群落表面温度計測を実施します.これらの計測値と数理モデルを利用することで,生育期間を通して植物状態を把握するための手法を開発し,ドローンによる広域展開に挑戦します.

非破壊計測を利用した発展途上国の栽培管理技術の検討

本研究の対象地域である東南アジアやアフリカ各国では,土壌が貧栄養であるだけでなく,水環境の変動が大きいため,作物生産が非常に脆弱かつ不安定であることが問題となっている地域が多いです.現在までに,非破壊計測とモデル式を利用して開発してきた手法を利用して,作物生育に対する栄養環境と水環境の交互作用を定量的に明らかにすることに挑戦します.これによって,異なる水環境下での施肥の時期や量などの適正な栽培管理技術を提案することを目指します.具体的には,多様な栄養・水環境を設定した日本での栽培試験において,非破壊的かつ経時的に葉面積と分光放射率を計測することで,現地に適用した栽培環境および管理方法の評価手法を確立し,それらを現地のフィールド試験において検証することを予定しています.

作物群落生産性評価モデルの構築

これまでに作物生育の簡易的な評価手法の開発を行ってきましたが,生殖成長期の生理的形質を把握することは困難でした.ここでは,葉量と葉質の分布の定量化手法を確立することにより,生殖成長期の作物の群落構造を簡易的に評価する技術を構築することに挑戦します.生殖成長期に非破壊的な層別計測を実施し,数理モデルを用いて群落構造を評価するだけでなく,既存の群落光合成モデルを利用することで群落内の生産性分布に関する品種間差,栽培管理による変化の検出を試みます.さらに,現在までに確立された栄養成長期の簡易評価手法と統合することによって生育期間全体を通した作物生育情報の収集手法の確立を目指します.これによって,収量形成過程を考慮した収量予測やストレス情報の詳細な把握が可能になると考えています.

広域計測とAI技術を駆使した作物収量予測モデルの開発

気候変動下における作物栽培の効率化のための方策として,簡易的な作物の生育評価および収量予測が必要とされています.これまでに近接リモートセンシング計測と数理モデルを利用することによって,作物収量の予測手法を考案してきました.近年,ドローンが普及し,これを利用することによって予測手法がより簡易・広域化された技術となりえます.一方で,遠隔からの測定であるため予測精度が下がってしまう可能性があり,これを向上させるためのツールとして AI 技術の利用が考えられます.ここでは,ドローン計測と AI 技術を利用することで,作物収量を簡易・広域的かつ高精度で予測するためのモデル開発に挑戦します.ドローン計測によって栽培期間中に経時的に取得したマルチスペクトル画像・熱画像と数理モデルを利用したうえで,異なる機械学習や深層学習手法を検討し,予測精度向上のために最適な学習モデルの提案を目指します.

「観る」×「診る」によるストレス評価技術の開発

近年,赤外線サーモグラフィー等で,作物の様子を圃場全体で経時的に「診る」 (診断する)試みが行われていますが,それらのデータが,どのような細胞内変化と一致するのかは不明である.一方,実験室では,電顕を用いて,三次元的にオルガネラから細胞レベルでの変化を「観る」 (観察する)ことができますが,細胞レベルのスケールのため,個体や群落の評価には適しません.ここでは,組織レベルでストレス障害を計測できる二次元イメージングクロロフィル蛍光測定装置を用い,電顕レベルの三次元解析と圃場で使用される技術とを対応させ,細胞から群落までの階層を埋めることで,圃場で用いられる広域観察用の手法を塩ストレス障害発現の観察に応用する手法の確立を目指します.これにより,「観る」と「診る」を融合した画像診断技術を確立し,圃場で非破壊かつ簡易的なストレス障害の観察に挑戦します.さらに,細胞障害を個体や群落レベルで可視化し,広域での環境ストレス障害把握の先駆的な事例となると考えています.

不要物を利用した作物生育栽培法の確立

コーヒーをいれるときに出るコーヒーの粕(抽出残渣)は,コーヒー飲料製造工場のほか,レストラン,喫茶店,ファストフード店や家庭からも多く排出され,廃棄物として処理されています.また,乳酸菌を作成するときには,pH調整のためにリンやカリウムが排出され,廃棄物として処理されます.これらのコーヒー抽出残差や乳酸菌資材などの廃棄物を植物栽培に有効活用できないかを検討しています.具体的には,それぞれの資材での栽培しやすい植物の特定や実際に使用する際の使用量や頻度の検討を行っています.これらはSDGsの一環として実施しております.

近畿大学

Hirooka Lab -Crop Science-

〒631-8505 奈良県奈良市中町3327-204

Copyright © Hirooka Lab
トップへ戻るボタン